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REPORTセールスレップを追うF
株式会社販路開発代表取締役住吉孝雄氏
アウトソーシング業の経験を活かし新会社を設立。
大手コンサルタントOBとメーカーの仲介役となる

今回ご紹介するのは、日本セールスレップ協会販路コーディネータで、2006年に株フ路開発を設立した住吉孝雄さん。
長年、さまざまな形でセールスの世界に関わってきた住吉さんに、これまでの経験、販路開発の今後の事業展開、これからのセールスレップのあり方などについて聞いた。

◆就職したら収入が減った!?
 住吉さんは北海道生まれの58歳。団塊の世代である。1973年に北海道大学を卒業し、北海道ぎょれん(北海道漁業協同組合連合会)に入社して水産製品の卸売・輸出入業務に携わるものの、6年後には退職してしまう。堅実なエリートコースからスピンアウトしたかに見える。
「大学時代は仕送りゼロだったため、自主映画の上映会やダンスパーティーを企画して学費や生活費を稼いでいました。いわばそのプロモーション収入で、大学を卒業できたわけです。ところが就職してみると、官僚的な組織で肌に合わず、おまけに学生時代に比べてずっと収入が減ってしまいました。それで会社を辞めて、アミューズメント機器の代理店を設立したのです」
 いまでいえば「学生起業家」が大学を卒業していきなり堅い会社に就職したものの、やはり物足りなさを感じて独立するというところだろうか。「インベーダーゲーム」が大ブレイクした年のことである。住吉さんはゲーム機をクルマに積み込み、観光ホテルを飛び込みで次々に攻略し、ある温泉街ではひとりで7割のマーケットを押さえたという。
 アミューズメント機器事業のかたわら、合い鍵と靴修理の事業で生協ルートを開拓するなどその商才を発揮するものの、あるきっかけによって訪問販売業界に転身、凄腕営業マンとして成果を上げる。実はこのときの経験が、現在の住吉さんのビジネス展開につながっている。
 その後、主に外資系の訪販会社からマニュアルの作成や営業担当者の教育訓練を依頼され、さらに営業アウトソーシング会社の経営に携わるようになる。つまり住吉さんは、20年以上も前からセールスレップ的な営業の仕組みづくりに関わってきたということになる。

◆販路開発が目指すものは
 住吉さんは「販路開発研究会」を結成する。販路開発研究会は、いわば営業アウトソーシングに関する人的ネットワークであり、全国で活躍しているかつての部下がその中心をなしている。
 住吉さんは以前から、定年を迎えたベテランコンサルタントによってベンチャー企業を育成・支援できないかと考えていた。資金力のないベンチャーは、このようなコンサルティングファームに依頼することはなかなかできない。その一方で、会社を定年退職したコンサルタントは、たとえ顧問料が数万円であっても、企業を支援する仕事を続けたいという人が多い。社内コンサルタント時代には無理でも、フリーになればそんなマッチングが可能になる。
 そこで、彼は新会社で長年付き合いのあるコンサルタントと販路開発研究会の人脈を活かして、商品の発掘力を提供する仕組みづくりをはじめた。キャリアネットワークである。そしてそのプロセスのなかで、日本セールスレップ協会とのつながりが生まれた。国や自治体がバックアップする企業・商材の情報が豊富に集まるところにメリットを見いだしたといえるだろう。

◆電機メーカーが開発した消臭剤をどこで売る?
 住吉さんのネットワークを活かした成功事例には、どんなものがあるのだろうか。
 ある大手電機メーカーが開発した消臭剤。実は、この製品は原子力発電所の冷却水に含まれる微量の放射性物質を付着させ、ゲル状にして回収する技術から生まれたものだ。一般の消臭剤は強い臭いで悪臭を封じ込めるのに対し、その消臭剤はアンモニア系の腐敗臭だけを除去し、そこにある本来の臭いは残るという。たとえば、革張りのシートを備えたクルマにこの消臭剤を置くと、タバコ臭や食べ物のカスから生じる悪臭が消え、草の臭いはそのまま残るのである。
 このメーカーは、カー用品販売会社を中心に売り込んだのだが、畑違いの大手電機メーカーということもあって、なかなか反応してもらえない。
 そこで、かねてから大手カー用品チェーングループのキーマンとつながりがあった住吉さんが、商品のサンプルを大量に持ち込んで、その効果を試してもらった。カー用品販売店の顧客は男性が圧倒的に多いが、同グループが展開する大型店では、女性や子どももターゲットにしている。このため、女性や子どもが喜ぶような商品をどんどん紹介してほしいという要望が住吉さんに寄せられていたのだ。
 テストの結果は上々だったが、カー用品としては現状のサイズは大きすぎることに加え、電機メーカーのブランドでは違和感があるという注文がついた。それを受けてメーカーは、車内に置いても邪魔にならないコンパクトサイズにつくり直し、同グループブランドでのOEM供給をしたのである。
 レップのもっている人脈と情報によってメーカーと販売店を結びつけ、相互に情報交換することによってメーカーにとっては新たな販路を開拓でき、販売店にとっては有力商品の品揃えにつながるという、まさにセールスレップのお手本のような事例といえる。
 メーカーにも販売店にもわからない部分を「見える化」し、そのニーズを結びつけるのがセールスレップの重要な役割といえるが、やはりそこに不可欠なのは人と情報のネットワークであり、ビジネスを先まで見通すレップ自身の想像力といえるだろう。

◆セールスレップが機能するための条件は
 長年、セールス活動や営業アウトソーシングの事業に携わり、現在はそれらのテーマについて講演活動も行なっている住吉さんは、セールスレップの現状をどう見ているのだろうか。
「セールスレップは商材の仲介機能だけをもつ形になっていますが、いくら商材がよくても、地方の無名のメーカーから仕入れることに不安感をもつお客様は少なくないと思います。つまり、レップは人脈だけで取引を成立させられるのかという問題です。このため、私の場合はレップ契約を結ぶ際に代理店契約も結んでいただけるよう、メーカーさんにお願いしています。レップに決済機能をもたせることで、買う側が安心できるからです。ですから、オーソドックスなやり方とは少し違いますね」
 そして、セールスレップは増加しているものの、二極分化が進んでいるという。それは、一定以上の役職を務めて大企業をリタイアし、生活にもゆとりがあるレップと、リストラにあった中高年や人脈の乏しい若年層のレップである。
 前者は豊富な人脈をもち、目先のことに左右されないため成功する確率が高いが、後者はもともと人脈が細いことが多いため、安定的に成功するのはきびしいのではないかと住吉さんは見る。
 日本とアメリカのセールスレップの性格はやや異なるものの、アメリカで活躍するレップは、いわゆる「名士」が多いといわれる。もちろん、その出自だけでレップの適性が決まるわけではないのだろうが、大企業リタイア組のほうが有利なケースが多いことは否めないようだ。

◆メーカーは営業コストを負担すべきだ
 さらに、商材を提供する側のベンチャー企業に対しても、住吉さんの見る目はきびしい。
「正直言って、ベンチャーさんには商材に対する思い込みが激しすぎるところがあります。画期的な新製品ができたといっても、私たちから見れば同じような商品ばかりです。そして、レップに対して『いい製品ができたから売ってくれ』と言うだけでは、なかなかうまくいくものではありません。現状は、売れた場合の販売手数料という形でレップ契約がなされることが多いのですが、フルコミッション方式で長続きするとは思えません」
 つまり、メーカーはセールスレップに営業を任せきりで、商品説明にも赴かず、売るための努力を怠っているのではないかということだ。そして、メーカーも売るためのコストを負担するべきだと指摘する。
「毎月、5万円でも10万円でも定額の料金をレップに支払うようにすれば、もっと熱心にレップからの情報を開くようになり、売るための努力をするようになるはずです。つまり、営業コストが発生すればそれだけ真剣にならざるを得ないのです。これまでは、製品をつくることだけにコストをかけてきたとしても、今後はせめて2割の余力を残して、その分をマーケテイングに振り向けてもらいたいですね」
 十数年前、岩手県の食品メーカーが県の助成を受け、東京進出のためのマーケテイング戦略を実施したことがあったという。費用は県と企業が折半する形で、当初は4社連合で統一ブランドをつくり、営業支援会社(セールスレップ)といっしょにメーカーの担当者も首都圏のローカルスーパー回りをしたのである。その結果、自社の商品は首都圏には合わないと判断し撤退する企業もあれば、4社連合から外れて単独で進出できた企業もあったそうだ。そして、参加企業は替わるものの、この試みは現在まで続いているのである。
 これがひとつのモデルケースになるだろうと住吉さんは言うが、メーカー側の努力も、セールスレップというシステムを機能させるために必要なことがよくわかる。
 住吉さんは今後、前述のキャリアネットワークづくりを中心に活動するとともに、セールスレップ協会からは、レップの教育、スキルアップを依頼されているという。
「もうお金ではない」と悟淡とした住吉さんだが、セールスレップというシステムを社会に根づかせ、発展させるために、まだまだやるべきことはたくさん残っているようだ。